「こちら」は直すべき?リンクテキストの判断基準
SEOの入門記事を読むと、たいてい同じ指摘に出会います。「リンクのテキストに『こちら』『詳細はこちら』を使ってはいけません」。自社サイトを見返すと、たしかに「詳しくはこちら」が並んでいる。それを全部「料金プランを見る」のように書き換える作業を、これから始めようとしているところかもしれません。
その作業に入る前に、ひとつ確認しておきたいことがあります。「こちら」という語そのものが問題なのか、それとも別の何かが問題なのか、という点です。ここを曖昧にしたまま一括置換をすると、直さなくてよかったリンクまで不自然な日本語になり、逆に本当に直すべきリンクが手つかずで残ります。
この記事では、自社サイトを自分で良くしたい担当者に向けて、リンクテキスト(アンカーテキストとも呼びます。リンクが設定されている、クリックできる文字のことです)を書き換えるべきものと、そのままでよいものに仕分ける手順を整理します。作業量を増やすのではなく、減らすための判断基準です。
Google公式のガイドがリンクテキストについて書いていること
まず、公式の記述で確認できる範囲を押さえます。ここが土台になります。
Google 検索セントラルの「SEO スターター ガイド」は、リンクそのものの役割をこう説明しています。リンクを使用することで、ユーザーや検索エンジンを自分のサイトの他の部分や、他のサイトの関連するページにつなげることができます。そして、Google でも、新たなページの発見のほとんどはリンクを通じて行われています、とされています。クロールというのは、Googleの自動巡回プログラムがウェブページを巡回して情報を集めることです。新しいページが見つかる経路の大半がリンクだ、というのが公式の説明です。
そのうえで、リンクテキストについての定義が続きます。リンクテキスト(アンカーテキストとも呼びます)とは、リンクのテキスト部分であり、表示されるものです。このテキストはユーザーや Google に対して、リンク先のページについての情報を伝えます。
そして、この記事にとって最も重要な一文がこれです。適切なアンカーテキストがあれば、ユーザーと検索エンジンは、リンクされたページにアクセスする前にその内容を簡単に把握できます。
ここをよく読んでください。「適切」の中身として説明されているのは、単語の良し悪しではなく機能のほうです。すなわち、リンク先を開く前に、その中身が把握できる状態になっているかどうか。「この語を使え」「あの語は使うな」という単語のリストの形では書かれていません。
公式ガイド自身も、文中で「こちら」と書いています
では、「こちら」はどう扱われているのでしょうか。
同じスターター ガイドの本文を読み進めると、専門家に依頼する場合の案内として、その際には、こちらの項目をご検討くださいという一文が出てきます。公式ガイド自身が、案内の文章のなかで「こちらの項目」という書き方をしている、ということです。
この一文だけから「Googleは『こちら』を推奨している」と読むのは行きすぎです。文脈も違います。ただ、少なくとも**「こちら」という語を一切使わない書き方を、公式ガイドが自ら徹底しているわけではなさそうだ**、とは読めます。
そして、さきほど確認したリンクテキストの説明のほうは、あくまで機能――アクセスする前に内容を把握できるか――として書かれていました。特定の語を避けよ、という形の指示としては書かれていません。
とすると、「こちら」が入っているかどうかを機械的に探して一括で置き換える作業は、公式の記述からそのまま導かれるものではない可能性があります。導かれるのは、さきほどの機能の話――開く前に中身が把握できるか――のほうです。
この違いは実務ではかなり大きくなります。たとえば次の2つのリンクを比べてみてください。
- 「料金プランの詳細はこちらをご覧ください」
- 「詳しくはこちら」(前後に何の説明もない、記事末尾のボタン)
前者は「こちら」という語を含んでいますが、同じ文のなかに「料金プラン」と書いてあります。読者は開く前に飛び先が分かります。後者は同じ語ですが、飛び先の手がかりがどこにもありません。語は同じでも、機能を満たしているかどうかは正反対です。一括置換はこの2つを区別できません。
判断軸は「クリックする前に分かるか」だけに絞る
そこで、点検の軸をひとつに絞ります。そのリンクは、クリックする前に飛び先の中身が分かるか。分かるなら直さなくてよい。分からないなら書き換え候補。これだけです。
ここで多くの人がつまずくのは、自分の書いた記事を自分で読むと、飛び先を知っているせいで全部分かった気になってしまうことです。書き手には「詳しくはこちら」がどこへ飛ぶか自明なので、点検にならないのです。
これを避けるために、次の手順を使います。読者の状態を人工的に作り出す点検です。
リンクテキスト抜き出しテスト(6ステップ)
自社サイトの記事を1本選び、次の順にやってみてください。所要時間は1記事あたり10分ほどです。
- 記事のリンクテキストだけを、上から順に書き出す。本文は写さず、クリックできる文字だけを1行ずつ並べます。表計算ソフトでもメモ帳でもかまいません。ブラウザで記事を開き、リンク部分(多くは色が変わって下線が付いている箇所)を上から拾っていきます。
- 書き出したリストだけを見て、各行の飛び先ページの名前を自分で答える。本文には戻りません。ここが点検の本体です。答えが出てこない行、「たぶんあのページ……」と迷う行に印を付けます。
- 印の付いた行だけ、本文に戻って前後の文を読む。そのうえで、もう一度飛び先を答えます。前後を読めば分かったものと、前後を読んでも分からないものに分かれます。
- 前後を読んでも分からなかったものを、書き換え確定にする。ここが最優先です。読者は本文を読み飛ばしていることも多いので、前後を読んで初めて分かるリンクも本来は候補ですが、優先度は下がります。
- 書き換え確定の行について、リンク先ページの題名を確認し、その題名に寄せた言い回しを作る。ゼロから考えないのがコツです。飛び先の題名が「料金プランと機能の比較」なら、リンクテキストは「料金プランと機能の比較」か、文中に収まるよう縮めて「料金プランを比べる」あたりになります。
- 書き換えた文を声に出して読み、日本語として不自然でないか確かめる。不自然なら、リンクテキストではなく文のほうを書き直します。多くの場合、「詳しくはこちら」が生まれるのは、その前の文が飛び先の内容を説明していないからです。
判断の目安として、ステップ2で印が付いた行が全リンクの半数を超えたら、個別の書き換えではなく記事の構成そのものを見直したほうが早い、と考えています。リンクの説明が本文側にほとんど無い状態だからです。逆に印が数本なら、その数本だけを直せば十分です。
実際に1本通してみる
自社の記事「検索順位が下がったときの点検手順」を例に、この6ステップを通してみます。
ステップ1でリンクテキストだけを抜き出すと、こうなりました。
- こちら
- 詳しくはこちら
- Search Console
- 内部リンクの記事
- こちらからお問い合わせください
ステップ2、リストだけを見て飛び先を答えます。「Search Console」は外部のツールだと分かります。「こちらからお問い合わせください」も問い合わせフォームだと分かります。残る3つ――「こちら」「詳しくはこちら」「内部リンクの記事」――は答えられませんでした。3つに印が付きます。
ステップ3、本文に戻ります。1つ目の「こちら」は「順位変動の記録方法はこちら」という文のなかにありました。前後を読めば分かります。2つ目の「詳しくはこちら」は、記事末尾に単独で置かれたボタンでした。前後に説明がありません。3つ目の「内部リンクの記事」は、直前に「サイト内のリンク構造については」と書いてあり、前後を読めば分かります。
ステップ4、前後を読んでも分からなかったのは、記事末尾の「詳しくはこちら」1つだけでした。5本中1本です。半数以下なので、構成の見直しではなく個別の書き換えで対処します。
ステップ5、この「詳しくはこちら」の飛び先を確認すると、「Search Consoleのクリック数が減ったときの点検手順」という記事でした。題名に寄せて「クリック数が減ったときの点検手順を見る」に書き換えます。
ステップ6、声に出して読みます。ボタンとしては少し長いので、「クリック数が減ったときの点検手順」までに縮めました。ここで、2つ目に印の付いた「内部リンクの記事」も、飛び先の題名が「内部リンクの最適化」なので、ついでに「内部リンクの最適化」へ揃えておきます。
5本のリンクのうち、実際に手を入れたのは2本でした。一括置換なら3本の「こちら」全部を書き換えて、しかも文脈で分かる1本目を不自然にしていたところです。
書き換え候補の判定表
点検結果を仕分けるときの表です。自分のリンクを当てはめてみてください。
| リンクテキストの状態 | 判定 | 理由と、つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 同じ文のなかに飛び先の主題が書いてある(例:「料金プランの詳細はこちら」) | そのままでよい | 開く前に中身が把握できる状態は満たしています。ここを書き換えると「料金プランの詳細は料金プランを見る」のような重複した文になりがちです |
| 単独で置かれ、前後に説明がない(例:記事末尾のボタン「詳しくはこちら」) | 書き換え確定 | 読者が本文を読み飛ばしても目に入る位置なので、影響が最も大きい箇所です。飛び先の題名をそのまま入れるのが確実です |
| リンク先の題名がそのまま入っている(例:「内部リンクの最適化」) | そのままでよい | 最も手堅い形です。飛び先の題名を後から変えたときに、リンク側が古いままになる点にだけ注意します |
URLがそのまま貼ってある(例:https://example.com/plan/) | 書き換え候補 | 読者は文字列から中身を推測できません。ただし「出典として原典のURLを示す」意図なら、そのままにする判断もあります |
| 画像だけのリンク(バナーなど)でテキストがない | 別扱いで点検 | 後述の代替テキストの話になります。見落としが最も多い箇所です |
| 飛び先と関係のない語が並んでいる(狙っている検索語を詰め込んだ形) | 書き換え確定 | 開く前に中身が把握できる状態から遠ざかっています。次の節の注意点にも関わります |
この表で「そのままでよい」に入ったものには、手を付けません。作業量を減らすのがこの点検の目的です。
書き換えるときに、逆方向へ行きすぎない
「こちら」を直す作業には、副作用があります。狙っている検索語をリンクテキストに詰め込む方向へ振れてしまうことです。「料金プランを見る」で足りるところを、「SEO分析ツール 料金プラン 比較 おすすめ」のようにしてしまうケースです。
ここで公式の記述を確認しておきます。Googleのスパムに関するポリシーは、リンクスパムとは、検索ランキングを操作することを主な目的として、サイトへのリンクやサイトからのリンクを作成する行為ですと定義しています。挙げられている例は、ランキングを上げることを目的としたリンクの売買などです。
この定義が名指ししているのは「リンクを作成する行為」であって、リンクテキストの語句選びそのものではありません。ですから、自社サイト内のリンクテキストを分かりやすく書き換えることが、この定義に直接あたると読むのは無理があります。過度に不安になる必要はありません。
ただ、方向としては覚えておく価値があります。同じスターター ガイドは、コンテンツを書くときの心得として、Google の高度な言語マッチング システムは、ページとさまざまな検索語句との関連性を把握できるため、ページにそのとおりの語句を明示的に使用する必要はありませんと述べています。これはコンテンツ本文についての記述なので、リンクテキストにそのまま適用できると言い切ることはできません。それでも、語句をそのまま入れることに執着しなくてよいという発想の方向は共通していると考えています。
実務上の落としどころとしては、リンクテキストは飛び先ページの題名を基準にするのが安全です。題名は元々そのページの内容を表しているので、詰め込みにも不足にもなりにくい。ゼロから語句を組み立てるより、判断が速くなります。
見落としやすい3つのケース
テキストのリンクを点検し終えたあとに残りやすい箇所です。
1. 画像だけのリンク(バナー・アイコン)
クリックできる文字がないので、リンクテキストの抜き出しに引っかかりません。ここで働くのが代替テキストです。
スターター ガイドは、代替テキストとは、画像とコンテンツの関係を簡潔に説明するものですとし、何に関する画像なのかや、画像とページとの関係の背景を検索エンジンが理解するのに役立つため、適切な代替テキストを書くことは極めて重要ですとしています。追加の方法についても、img 要素の alt 属性を使って HTML に追加できますが、CMS では画像をサイトにアップロードする際にその説明を指定する簡単な方法が用意されている場合がありますと書かれています。CMSというのは、記事を書いて公開するための管理画面のことです。
コードを触れなくても、多くの場合は管理画面の画像設定に説明を入れる欄があります。バナーを1枚ずつ開いて、その欄が空でないかを確認するのが実際の作業になります。
2. 広告・アフィリエイトのリンク
自社サイトに広告や紹介リンクを置いている場合、リンクテキストとは別の観点が必要になります。Googleは、広告や有料プレースメントのリンク(一般に「有料リンク」と呼ばれます)を sponsored でマークアップしますとして、rel="sponsored" を案内しています。
スパムポリシーの側にも対応する記述があります。Google は、リンクの売買も、広告やスポンサー活動を目的として行われる限り、ウェブ上での通常の経済活動の一環だということを理解しています。こうしたリンクは、rel="nofollow" 属性や rel="sponsored" 属性を <a> タグに設定している限り、Google ポリシーに対する違反にはなりません。
つまり、広告リンクがあること自体が問題なのではなく、関係性を示す設定がしてあるかどうかが分かれ目として書かれています。この設定の具体的なやり方は、広告・アフィリエイトリンクのrel属性の使い分けで扱っています。
3. 自社サイト内で、クロールさせたくないページへのリンク
「このページはGoogleに見に来てほしくない」という場合に、リンク側で rel="nofollow" を付けて済ませようとすることがあります。ここは公式の案内が明確に分かれています。
Googleは、rel="nofollow" について、リンクにその他の適切な値がなく、そのリンクとサイトを関連付けたくない場合、またはリンク先のページをサイトからクロールさせないようにする場合は、nofollow の値を使用しますとしたうえで、自サイト内のリンクについては、robots.txt の disallow ルールを使用しますと書いています。robots.txtは、クローラーに巡回してよい範囲を伝えるための、サイトの入口に置く小さな設定ファイルです。
さらに、リンク側の指定だけでは足りない理由も添えられています。一般に、このような rel 属性でマークアップされたリンクがたどられることはありません。リンクされているページは、サイトマップや他のサイトからのリンクなど、他の方法で発見されることがあるため、依然としてクロールされる可能性があります。リンクを1本たどらせなくても、別の経路から見つかることがある、ということです。
自社サイト内の話であれば、リンクテキストの点検とは別の作業として扱ってください。
まとめ:今日やること
やることは3つです。
- アクセスの多い記事を1本選び、リンクテキスト抜き出しテスト(6ステップ)を通す。 リンクテキストだけを書き出し、飛び先を当てられるか自分で試します。
- 印が付いた行を判定表に当てはめ、「書き換え確定」だけに手を入れる。 文脈で分かるものは触りません。書き換えは飛び先ページの題名を基準にします。
- 同じ記事の画像リンク(バナー)を1枚ずつ開き、説明の欄が空でないか確認する。 抜き出しテストでは見つからない箇所です。
公式ガイドが示していたのは、開く前にリンク先の中身が把握できるかという一点でした。「こちら」という語を探して回る作業は、その一点の代わりにはなりません。語ではなく機能で判定すると、直すべき箇所はたいてい想像よりずっと少なくなります。
リンクの「文言」ではなく「構造」――どのページからどのページへ、何本つなぐか――を見直したい場合は、内部リンクの最適化を続けて読んでみてください。
出典
