表記揺れや誤字はSEOのために入れるべきか
「『スマートホン』で検索する人もいますよね。念のため本文にも入れておきますか」——この相談は、今でも普通に来ます。
答えを先に書きます。入れなくていいです。
ただし「表記の違いを全部無視していい」という意味ではありません。どの表記をメインに据えるかを決める作業は、今も残っています。撒くのをやめて、選ぶ。ここが分かれ目です。
意図的に撒いた表記を、ポリシーの定義に当ててみる
Google のウェブ検索のスパムに関するポリシーは、「キーワードの乱用」をこう定義しています。
キーワードの乱用とは、Google 検索結果のランキングを操作する目的で、ウェブページにキーワードや数字を詰め込むことです。
続けて、こうあります。「キーワードの乱用では、不自然にリストやグループの形式を使ったり、関連性のない場所でキーワードが記載されたりする傾向があります」。
例として挙がっているのは3つです。実質的な付加価値のない電話番号の羅列。ウェブページが特定の都市や地域に関する検索結果の上位に掲載されるようにするための、地名を羅列したテキストのブロック。そして「同じ単語や語句を不自然なほど繰り返すこと」。
ここで自分の原稿を思い出してください。記事の末尾に「※『シュミレーション』とも表記されます」と一行足す。あるいは本文の途中に、文脈と関係のない場所で別の表記をねじ込む。
その一行は、読者のために書いたものですか。
検索結果のために書いたのなら、定義にある「関連性のない場所でキーワードが記載される」に当てはまらないかどうかを、自分で確かめる必要があります。引用した定義が語っているのは、目的(ランキングの操作)と、その現れ方(不自然な配置・不自然な繰り返し)です。「一行だけなら安全」という判断は、この定義からは出てきません。安全だと言い切りたいなら、自分の側に別の根拠が要ります。
同じポリシーは、検出のしかたにも触れています。自動システムと、必要に応じて行われる人間による審査。場合によっては手動による対策。そして、ポリシーに違反しているサイトは「検索結果での掲載順位が下がったり、まったく表示されなかったりすることがあります」。
上振れを狙って撒いた一行が、下振れの側に転ぶ可能性がある。そう考えると、割に合いません。
それでも「どの表記を選ぶか」は決めないといけない
撒くのはやめる。でも、選ぶ作業は残ります。
「スマホ」で書くのか「スマートフォン」で書くのか。「Webサイト」か「ウェブサイト」か。「問い合わせ」か「お問い合わせ」か。原稿を書き始める前に、どれか1つに決める必要があります。
これは検索エンジン向けの小細工ではありません。読者に届く言葉を選ぶ作業です。
Google 検索セントラルの「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」には、こう書かれています。「SEO は、検索エンジンではなくユーザーを第一に考えたコンテンツに適用した場合に効果を発揮します」。表記選びも、この枠の中の作業として扱うほうが素直です。
同じページには、Google の自動システムについての記述もあります。「関連するコンテンツを特定した後、最も役に立つと判断されたコンテンツに高い優先順位を付けます」。判定に使われる要因は複数あり、経験・専門性・権威性・信頼性がそこに含まれる、とされています。
表記の統一が評価にどう効くのかは、この記述からは読み取れません。分かるのは、優先されるのが「最も役に立つと判断されたコンテンツ」だということだけです。読みにくい原稿がそこに入りにくいだろう、というのは推測の範囲になります。
メイン表記を決める5ステップ
決め方を手順にします。所要時間は、1語につき10分程度です。
- 候補の表記を書き出す。多くても4つまでにしてください。「スマホ/スマートフォン/スマートホン/携帯」のように並べます。5つ以上出てくるときは、その時点で語の選定自体を疑ったほうがいいです。読者が使わない表記まで拾っている可能性があります。
- シークレットウィンドウ(履歴を残さない閲覧モード)で、候補ごとに検索する。比較の条件をそろえるための手順です。ログインしていない状態で、候補の表記を1つずつ入れます。候補ごとにウィンドウを開き直しておくと、あとで結果を見比べるときに取り違えません。
- 上位10件の顔ぶれを比べる。ドメイン名だけを上から書き写して、2つのリストを並べます。見るのは順位そのものではなく、重なり具合です。8件以上が同じサイトなら「ほぼ同じ」、半分以下なら「大きく違う」と扱います。つまずきやすいのは、広告や地図の枠を数えてしまうことです。通常の検索結果だけを数えてください。
- Search Console で、自社にどちらの表記で来ているかを見る。検索パフォーマンスの画面から、検索クエリの一覧を出します。候補の表記を含むクエリがあれば、表示回数(検索結果にページが出た回数)とクリック数を表記ごとにメモしてください。画面の作りは時期によって変わるので、見当たらないときはクエリの一覧が出せる場所を探します。両方の数字が極端に小さいときは、判断材料にしないほうが安全です。数件の差は、翌週には入れ替わることがあります。
- メイン表記を1つ決め、原稿全体をそれに統一する。決めたら、見出し・本文・画像の説明文まで揃えます。もう一方の表記は、本文に無理に登場させません。
手順の要点は3と4です。3で「Google が同じ意図として扱っているように見えるか」を観察し、4で「自社の読者が実際に使っている語」を確認する。前者は推測、後者は実データです。食い違ったときは、4を優先してください。
実際に1語通してみる
「シミュレーション」と「シュミレーション」で、この5ステップを通してみます。
候補は2つです(ステップ1)。シークレットウィンドウで両方を検索します(ステップ2)。
上位10件のドメイン名を、それぞれ書き写して並べます(ステップ3)。ここで見るのは重なり具合だけです。
仮に、8件以上が同じサイトだったとします。
そのときは、こう読めます。誤った表記で検索した人にも、正しい表記で書かれたページが並んでいる。だとすれば、上位のページは「誤字を本文に含めたから」そこにいるわけではない。誤字を足す理由が、1つ消えます。
逆に、顔ぶれがほとんど重ならなかったとします。そのときは表記の揺れではなく、別の需要が隠れている可能性を疑ってください。判定表の3行目の扱いになります。
次に Search Console を開きます(ステップ4)。自社の検索クエリの一覧から、「シュミ」を含むものを探して表示回数を見ます。ここで該当がなければ、話は終わりです。誤った表記からの流入を心配する必要が、そもそもありません。
該当があって、表示回数が数十件あった場合はどうするか。それでも、本文に誤字を足す判断にはなりません。すでに表示されているということは、誤った表記を本文に持たないまま検索結果に出ている、ということだからです。
そしてステップ5で「シミュレーション」に統一します。この1語について、追加の作業はありません。
10分で終わり、原稿は1文字も汚れませんでした。
状況別の判定表
5ステップの結果を、4つのパターンに整理します。
| 上位10件の顔ぶれ | Search Console での流入 | やること |
|---|---|---|
| ほぼ同じ(8件以上重なる) | 両方の表記で来ている | 表示回数が多いほうをメインにする。もう一方は本文に足さない |
| ほぼ同じ(8件以上重なる) | 片方だけ、または両方ゼロ | 来ているほう、なければ読者に自然なほうを選ぶ。それで終わり |
| 大きく違う(半分以下) | 問わない | 別の検索意図として扱う。1つの記事に混ぜず、必要なら別ページを立てる |
| 判断できない(件数が少ない・結果が安定しない) | 問わない | 読者が声に出して読んで自然なほうを選ぶ。3か月後に見直す |
1行目は、さきほどの「シミュレーション」の例がまさにこれです。顔ぶれが重なった、と仮定した側の分岐でした。
2行目は、社名や商品名でよく起きます。自社の正式名称でしか流入がないなら、通称を本文に足す理由は出てきません。
3行目には注意が必要です。たとえば「アプリ」と「アプリケーション」は、文字としては近いのに、上位に並ぶページの性質が変わることがあります。そういう語は、表記の揺れではなく別の需要だと考えたほうが整理しやすくなります。検索意図の見分け方は検索意図の調べ方と4分類にまとめています。
4行目は、新しく作ったサービス名や、まだ流入のないページで起きます。データがないときに無理やり決めても、根拠のない決定が残るだけです。読みやすさで決めて、日付をメモしておいてください。
よくある誤解とエッジケース
誤解1: 誤字を直せば順位が上がる。
そうとは限りません。誤字の修正は、読者が読みつまずく箇所を減らす作業です。順位はそれ以外の多くの要因でも動くので、修正した週に数字が動かなくても、それだけで失敗と判断する材料にはなりません。むしろ、誤字を直した直後に順位が下がったように見えて、実際は検索需要の季節変動だった、というほうがよくある話です。
誤解2: 社内の表記統一ルールと、SEO の表記選びは同じもの。
別のものです。社内ルールは全社の文書に一貫性を持たせるためのもので、読者が検索窓に何と入れるかは考慮していません。両者がぶつかったときは、記事ごとに例外を認めるか、社内ルールのほうを見直すか、どちらかを選ぶ必要があります。黙って両方使うのがいちばん良くない選択です。
エッジケース1: 正式名称と通称が大きく違う。
商品名や制度名では、正式名称と世の中で通っている呼び名が離れることがあります。この場合、正式名称を本文の主たる表記に据えたうえで、通称を1回だけ、自然な文脈で使うのは無理がありません。「◯◯(一般には△△と呼ばれます)」のような書き方です。定義の「関連性のない場所」に置かないことが条件になります。
エッジケース2: 生成AIで大量に原稿を作っている。
表記の揺れは、原稿の本数が増えるほど紛れ込みます。AI 生成コンテンツに関する Google のガイダンスは、「ウェブのコンテンツを作る際、特にコンテンツを自動的に生成する場合には、正確性、品質、関連性を優先します」としています。本数を増やす前に、表記の決定をどこかに書き残しておくほうが安全です。
公開前の自己点検
原稿を出す前に、この4つを確認してください。
| 確認すること | 引っかかったときの直し方 |
|---|---|
| この一行は、読者に読ませたい一行か | 読者向けでないなら削る。検索結果のために足した行が残っていないか探す |
| 声に出して読んで不自然な箇所はないか | 不自然な繰り返しは、代名詞や短い言い換えに置き換える |
| 同じ意味の語が、1段落に何度も出てきていないか | 段落単位で数える。3回以上出るなら組み立てを疑う |
| 検索エンジンを第一に考えて書いた箇所はないか | 「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」に載っている自己点検の問いをそのまま使う |
1つめは、この記事の最初に挙げた「※『シュミレーション』とも表記されます」の一行が該当します。3つめは、表記を統一したあとに起きがちです。片方に寄せた結果、同じ語が近い距離で何度も出てしまう。そのときは語を削るのではなく、文の組み立てを変えてください。
言葉の量そのものを増やそうとして起きる問題は文字数とSEOの関係に、検索エンジン向けの記述が効くという古い前提についてはメタキーワードは今も必要かにまとめています。
出典
